◆季刊オーディオアクセサリー184号(2022.2.21発売)特別付録サンプラーCD収録曲
86歳の「青年」青木十良。
終わりのない旅を続けられる人は幸せである
【内容】
頂上が見えない神秘の高峰、過去にその稜線にたどり着いたと思われる天才や巨匠達はいるものの、誰一人としてその頂きを極めたとされる人間はいない。そんな天の彼方の頂きを目指し、人が用意してくれた道路やケーブルカー、果ては登山道さえも頼らずに、自らの2本の脚を頼りに藪をかき分け岩を乗り越え登ってきた、そして、今もなお登りつづけている一人の男。
バッハの無伴奏チェロ組曲。チェリストにとってはあたかも6つの高峰を連ねる大山脈。86歳(CD録音時)の「青年」青木十良の姿がはるかその高嶺にある。それも、その連峰の中でひときわ大きくそそり立つ「第6番」に。
眩いばかりの陽の光が、さながらプリズムを通したかのような何種類もの原色を織り成して虹のシャワーのように降り注ぐ。それは、耳や脳だけではなく、衣服を徹し全身の肌に心地よい刺激を浴びせかける。しかし、何というとてつもないエネルギーだ。このような、輝いて輝いて、そしてまた輝いているバッハの演奏に出会ったことが果たしてあっただろうか。
ー中略
青木十良という心伝者がひとたび愛器スカランペラ(1912)を奏でるとき、もう演じてはいない、音を作ってはいない。ただ、心を、魂をデフォルメしているのだ。
終わりのない旅を続けられる人は幸せである。【北村貞幸(ライナーノーツより)】
【曲目】J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番
【演奏者】チェロ:青木十良
CD NF20301 発売日:2003年11月 (N&F)
録音:2000年8月25日~28日 旧後藤美術館(千葉)
使用楽器:Stefano Scarampella di Brescia 1912
収録時:85歳